オウンドメディアリクルーティングとは?始める際の注意点やメリットデメリットを徹底解説
企業が人材採用を検討する際、従来の求人サイトや人材紹介会社への依頼だけでは、思ったように応募者が集まらない、あるいは入社後のミスマッチが生じてしまうことが少なくありません。それぞれの手法には長所がある一方で、企業としての魅力や仕事の内容、職場の文化を深く理解してもらうには限界がある場合もあります。そんな状況で注目を集めるのが「オウンドメディアリクルーティング」という取り組みです。
自社が運営するメディアを「採用」という観点で戦略的に使うことにより、求職者に対して自社らしさを余すことなく発信し、長期的に自社にマッチする人材を呼び込む効果が期待できます。ネットを通じた情報収集が当たり前の現代にあっては、社内メンバーの声や実際の仕事内容、ビジョンなどを継続的に発信することで、求職者の信頼獲得を高めるのです。
本記事では、オウンドメディアリクルーティングの基本的な定義や、注目を集めている背景、運用のメリットとデメリット、具体的な始め方までを詳しく紹介していきます。専門的な知識や担当部署が必要になるケースもあるため、スタート時の注意点や予算計画なども踏まえながら、自社に合った導入方法を検討してみてください。
オウンドメディアリクルーティングは採用手法の1つです。
採用にお困りの方もそうでない方もぜひ最後までお読みください。
1.オウンドメディアリクルーティングとは
オウンドメディアリクルーティングとは、企業が自社で運営しているメディア(Webサイトやブログ、SNSなど)を採用活動の主軸として活用する手法を指します。求人サイトや人材紹介会社、いわゆる第三者プラットフォームだけに依存するのではなく、自らの情報発信を通じて求職者に魅力を直接伝えるのが大きな特徴です。メディアの運営には時間や工数がかかりますが、企業の理念やカルチャー、現場の生の声など、外部のサービスでは伝えきれない情報を積極的に発信できることが利点となります。
1-1オウンドメディアとは
オウンドメディアとは、企業や組織が自ら所有・管理し、情報を発信できるメディアの総称です。具体的にはコーポレートサイト、ブランドサイト、ブログ、SNSアカウントなどが該当します。これらは他社が運営するサービス(求人サイトなど)に比べて、自社でコントロールできる範囲が広いのが特徴です。
- 自社のストーリーや強みを自由にアピールできる
- 発信タイミングや掲載内容を自分たちで決定できる
- ブランディング戦略に沿ったデザインやコンテンツを展開しやすい
従来、オウンドメディアはマーケティングや商品プロモーションで注目されてきましたが、近年は採用活動にも応用され、企業の魅力を候補者に直接届ける手段として重要視されています。
1-2オウンドメディアリクルーティングとは
オウンドメディアリクルーティングは、前述のオウンドメディアの特性を活かし、採用候補者に向けた情報発信を積極的に行うことで、採用活動を効率化・高度化していく手法です。具体的には、社員インタビュー記事を連載したり、オフィス紹介や仕事内容を深掘りするコンテンツを企画したりと、求人広告では伝えきれない価値観や働く環境を発信していきます。
- 社員の日常や社内のイベント、プロジェクト事例をリアルに紹介
- 会社のビジョンやミッション、求める人材像を詳細に説明
- 自社で働く魅力ややりがいを、具体的なエピソードとともに届ける
これにより、単なる企業のロゴや求人票のデータとしてではなく、どんな会社か”“どんな人がどんな想いで働いているかといった本質的な魅力が求職者に伝わりやすくなります。リクルーティングコストを抑えつつ、ミスマッチを減らしながら適切な人材を獲得できる可能性が高まる点が、この手法の大きなメリットとなるでしょう。
関連記事はこちら:【個人でできる】オウンドメディアの作り方は?個人でできる集客方法3選
2.オウンドメディアリクルーティングが注目を集めている理由
オウンドメディアを使った採用活動は近年大きな注目を浴びています。単に時代のトレンドというだけでなく、労働市場の変化や求職者の情報収集行動が変化している背景があるからです。ここでは、オウンドメディアリクルーティングが普及する理由を紐解きながら、従来手法との違いを整理します。
2-1人材採用の複雑化
人材不足や求職者の働き方・価値観の多様化により、企業は必要な人材を獲得するために多くの選択肢を検討せざるを得ません。従来の求人サイトや人材紹介に加えて、ダイレクトリクルーティングやSNSリクルーティングなど、採用手法が多岐にわたる時代といえます。
求人サイトとの違い
- 求人サイトは多数の企業と求人が並ぶため、情報量が限られ、企業独自の文化や考え方が伝わりにくい一面があります。
- オウンドメディアでは、記事や連載企画などで深い情報を長期的に発信できるため、求人票だけでは紹介しきれない部分をカバーできます。
人材紹介との違い
- 人材紹介会社を介すと、企業と候補者が直接コンタクトを取る前に紹介費用やコミッションが発生します。
- オウンドメディアリクルーティングは、自社メディアを見た候補者からダイレクトに応募してもらえるため、費用対効果が高まる可能性があります。
ダイレクトリクルーティングとの違い
- ダイレクトリクルーティングは企業が候補者に直接アプローチする手法で、大量にスカウトメッセージを送るコストがかかる場合も。
- オウンドメディアリクルーティングは、能動的に情報を得たい求職者に対し、自社メディアを通じて魅力を伝えるため、自然にマッチする人材が集まりやすい利点があります。
2-2仕事への価値観の多様化
若手人材を中心に、給与や会社の規模だけではなく、企業のビジョンや社会的意義、働く環境・自由度などを重視する傾向が強まっています。自社の理念やカルチャーを深く理解してもらうためには、日常的な情報発信が欠かせません。オウンドメディアを活用すれば、経営者や現場社員の声、具体的な業務内容を細やかに伝えられるため、企業観に共感した人材が集まる確率が高まるのです。
2-3情報収集の多様化
SNSや動画プラットフォームなど、求職者が企業を調べる手段は多岐にわたります。ネットで情報を探す段階で、企業のコーポレートサイトや採用ブログへアクセスして、さらに詳しい情報を読むという流れが一般的です。そこでオウンドメディアが充実していれば、求職者がじっくりと会社理解を深めやすく、応募前から企業のことを信頼・好きになってもらうという状況を作ることも可能となります。
関連記事はこちら:オウンドメディアとSNSを併用すべき理由とは?メリットや成功の3ステップを徹底解説!
3.オウンドメディアリクルーティング運用のメリット・デメリット
オウンドメディアを活用した採用手法には多くのメリットが期待されますが、一方で運用における課題やデメリットも存在します。導入を検討する際には、双方をしっかりと把握し、社内体制やコスト面を踏まえながら準備を進めることが重要です。
3-1オウンドメディアリクルーティング運用のメリット
自社の認知を広めることができる
採用という目的に限らず、企業ブランディングやサービス認知度向上にも寄与するのがオウンドメディアの特徴です。専門性の高い記事や最新の業界情報などを継続的に発信することで、候補者以外にも幅広い読者が集まり、結果的に企業全体の知名度が上がる可能性があります。
自社の魅力を伝えやすくなる
求人情報には書ききれない社内の雰囲気やビジョン、働く人の考え方などをリアルに伝えられるのが最大の強みです。社員インタビューや取り組んでいるプロジェクトのレポートなど、メディアであればこそ発信しやすいテーマを活用し、興味を持った人材との接点を増やせます。
ミスマッチのリスクを減らすことができる
企業情報や実際の働き方を深く発信することで、求職者が応募前に“自社との相性”を見極めやすくなります。イメージとのギャップによる早期離職や採用コストの無駄を抑えながら、より企業文化に適合した人材が集まりやすくなるのはオウンドメディアリクルーティングの大きなメリットです。
採用力を高めることができる
情報発信を通じて、自社が求めるスキルや価値観を明確に示すことができます。これにより、会社の理念に賛同する優秀な人材や、共感を持って仕事に取り組める人材を惹きつける効果が期待できます。また、競合他社との差別化としても重要で、単に待遇面だけでなく、使命感や社風を重視する候補者の支持を得られるでしょう。
採用コストを抑えられる
求人サイトやエージェントに高額の手数料を支払う代わりに、自社メディアを育成しながら採用に活用することで、長期的にはコスト削減につながるケースもあります。オウンドメディアが認知度を獲得すれば、そのメディア経由での応募が自然に増え、広告費用を一定程度削減できる可能性があります。
3-2オウンドメディアリクルーティング運用のデメリット
軌道に乗るまで時間がかかる
メディアを運営してコンテンツを蓄積し、検索エンジンやSNSで評価されるようになるまでには少なくとも数ヶ月~1年以上の時間を要する場合があります。採用人数を短期間で大量に確保したいといった緊急性の高い状況では、その効果が出るまで待てないリスクが生じるでしょう。
短期で見た時のコストが高い
内製で記事制作をする場合も、専門ライターやカメラマン、デザイナーの外注を組み合わせる場合も一定の制作コストが発生します。また、サイト設計やシステム導入、SEO対策など初期投資も必要になるため、短期的には人材紹介会社を活用するより費用がかかることもあります。
導入や運用にかかる工数が大きい
オウンドメディアリクルーティングを成功させるには、定期的なコンテンツ更新や社員への取材、SNSとの連動、サイトの保守管理など、多岐にわたる業務が発生します。これらを担当するチームやリーダーを社内で用意し、適切にプロジェクトを運用する必要があるため、リソースが限られている企業にとっては負担が大きいと言えます。
社員の協力が必要になる
社内の事例や社員インタビューを記事化する際には、社員が取材に応じたり情報提供したりする協力が不可欠です。通常の業務に加えてメディア向けのコンテンツ作成に時間を割く必要があるため、社内理解と体制づくりが求められます。社員の協力を得られないと、せっかくのメディアも充実した内容になりにくいでしょう。
見られるサイトにするための対策が必要
せっかく魅力的な記事を作っても、検索エンジンやSNSでユーザーに見つけてもらえなければ意味がありません。SEO施策やSNS運用など、メディアそのものの集客施策を並行して行う必要があり、これにも一定の知識や予算が必要となります。
4.オウンドメディアリクルーティングの始めかたと費用感
オウンドメディアリクルーティングを始めるにあたっては、コンテンツ方針や運用体制を確立しながら、どの程度の費用をかけるかを計画することが大切です。闇雲に記事を量産しても成果が出にくいため、目的を明確にし、採用戦略と連動したメディア運営を行いましょう。
4-1ペルソナの設計
最初に行うべきは、どんな人材に来てほしいのかを明確化する作業です。職種やスキルセットだけでなく、価値観や働くスタイルまで想定し、それらをペルソナとしてまとめます。ペルソナを設計することで、どのようなコンテンツを発信すべきか、どのSNSプラットフォームを重視すべきかなど、メディアの方向性がクリアになります。
- 年齢・性別・職種経験などの基本情報
- 興味・関心分野や人生観・キャリア観
- どんな情報ソースから企業を知る傾向があるか
これらを踏まえ、「ペルソナが気になる会社のリアル」や「社内での働きがい」を具体的に発信するコンテンツを作成することで、企業を深く理解しようとする人材との接点を増やせます。
4-2採用のKPI・KGIを定める
オウンドメディアリクルーティングを成功させるには、単に記事を増やすだけでなく、採用活動としてどの段階でどれくらいの成果が欲しいのかを数値化して管理する必要があります。
- KPI例:
- メディア経由の応募数
- 1記事あたりのページビュー
- SNSでのシェア数
- KGI例:
- メディア経由で内定・入社した人数
- 内定承諾率の向上
- 採用コストの削減幅
長期的にメディアを育てるにあたり、3ヶ月や半年スパンで目標を設定し、定期的に分析・改善を行うことが重要です。短期成果を求めすぎると、質より量を重視したコンテンツになりがちなので、着実に社内外で評価されるメディアに育てる視点を忘れないようにしましょう。
関連記事はこちら:オウンドメディアは体制作りで成果が大きく変わる!必要な人員と役割を解説!
まとめ
オウンドメディアリクルーティングは、求人サイトや人材紹介に比べて自社ならではの文化や働き方を掘り下げて発信できる手段です。人材採用が難しくなっている現代において、採用の質やコストパフォーマンスを改善したいと考える企業にとって有効なアプローチとなるでしょう。とはいえ、実際にメディアを育てていくには時間と労力、組織的な協力が不可欠で、即効性を求める場合は不向きな点もあります。
長期視点で採用ブランディングを進めたい、あるいは自社のビジョンに強く共感する人材を集めたい企業にとっては、非常に大きな可能性がある施策です。ペルソナ設計やKPI・KGIの設定を行いながら、社員インタビューやプロジェクト紹介記事などを充実させることで、ミスマッチを抑えつつ、自社の想いに共鳴してくれる人材を惹きつける仕組みを作り上げられます。
これから始める場合は、短期的なリクルート手法とのバランスをとりつつ、オウンドメディアを中心に据えた採用戦略を少しずつ浸透させていくのが得策です。担当者や社内チームを整備し、必要に応じて外部の専門家のサポートも得ながら、将来の企業成長に欠かせない質の高い人材を引き寄せる基盤を構築してみてください。
オウンドメディアリクルーティングは、情報発信を通じて企業と候補者の間の相互理解を深め、採用を“より最適なマッチング”へと近づける有力な手段として、今後もますます注目が高まることが予想されます。自社の個性を余すところなく伝え、共感を軸にした採用活動を実現するために、ぜひ本記事を参考に検討を進めてみてはいかがでしょうか。