【マーケティングに必見】ブルーオーシャン戦略の事例を解説!
新型コロナウイルス流行によって世の中の変動が大きい時代の中で、成功した多くの企業が取り入れている経営戦略に「ブルー・オーシャン戦略」があります。
しかし、実際にブルー・オーシャン戦略がどのように経営に取り込まれているのか、どのようなメリット・デメリットがあるのか知らない方が多いのではないでしょうか。
この記事では、ブルー・オーシャン戦略の全容を解説します。
この記事を読めば、ブルー・オーシャン戦略について詳しく知ることができ、経営者の方は、新しい事業のアイデアを思いつきやサービスの改善点に気付くきっかけが得られます。ビジネスについて学んでいる方、起業を考えている方もぜひ参考にしてください。
ブルー・オーシャン戦略の概要
ブルー・オーシャン戦略とは、従来存在しなかったまったく新しい市場を生み出すことで、新領域に事業を展開していく戦略です。この戦略はW・チャン・キムとレネ・モボルニュによって提唱されました。まったく新しい市場を切り開いて創造することによって、他社と競合することなく事業を展開することが可能になり、高成長・高収益が期待できます。
対極となる概念がレッド・オーシャンであり、競合企業との競争によって血で染まった海のような既存の事業領域を指します。限られたものを奪い合うため不可避な競合との血みどろな戦いになりやすいです。また、従来は特別な価値をもっていたものが日用品化しやすく、継続的に業績を挙げることが困難です。
ブルー・オーシャン戦略が取り入れられる背景
ブルー・オーシャン戦略が取り入れられる背景として「VUCA」が考えられます。
「VUCA」とは予測困難で変化の激しい時代を指す言葉で、
・Volatility(変動性)
・Uncertainty(不確実性)
・Complexity(複雑性)
・Ambiguity(曖昧性)
上記4つの単語の頭文字をとった造語です。現代は新型コロナウイルス流行のような大規模な変化が起こりやすく、変動性の大きい時代です。このような時代の中、多くの企業は先行きが見えない不確実性、容易に解決策を見いだせない複雑性、問題の所在が見えにくい曖昧性の時代を切り抜けていく必要があります。既存の市場だけにこだわり続けると、突然の市場変化によって収益が大きく減少するリスクが高くなります。ブルー・オーシャン戦略によって新しい市場を開拓することで、市場の変化に柔軟に対応し、安定した収益を上げられます。
ブルー・オーシャン戦略の日本の成功事例
日本でも多くの企業がブルー・オーシャン戦略で成功しています。どのような企業が成功させているのか事例をご紹介します。
キュービーネット株式会社「 QBハウス」
QBハウスは、日本のキュービーネット株式会社が運営するヘアカット専門のチェーン店です。パーマやヘアカラーなどのメニューを無くし、「カットのみ」に特化しているのが特徴で、「10分で完了」「1000円」の散髪という短時間・格安料金で新しい市場を開拓しました。(2019年2月より1,200円に値上げ)
これは、「価格」という競争要因を減らし、「サービスの迅速さ」という競争要因を増やす戦略です。低価格と迅速さを実現するために「ヘアカット以外のメニュー」という競争要因を取り除く工夫を用いてます。実際、一般的な理容室でもカットにかけている時間は10分ほどです。QBハウスと大差がなく、顧客は理容師との会話や長い拘束時間から解放されるため、高い満足度を獲得し続けています。
株式会社ZOZO 「ZOZOTOWN」
ファッションに特化したサービスを提供しているZOZOTOWNは、ネットショップでファッションアイテムを購入することを躊躇する人たちの悩みを解決し、ほかのECモールとの差別化に成功しました。
元来ネットショップとファッションとの相性は、あまりよいものではありませんでした。なぜなら実際にフィッティングできないため、購入商品のサイズが全然合わないことがあるからです。また、ブランドメーカーや国によっては同じサイズ表記でも実際のサイズに差があるため、顧客の服選びを悩ませる原因となっています。そのため、試着ができないネットショップでは服や靴を購入しないという人も少なくありませんでした。そこで、全身を計測できる「ZOZOSUIT」や「ZOZOMAT」を開発し、顧客に自身の最適なデータを提供することによって、ストレスのないネットショップを展開しました。
また、「WEAR」というファッションアプリで参考にできるコーディネートを公開しています。投稿を見て、ほしいと思った商品のページに顧客がすぐにたどり着けるようにもしました。
任天堂株式会社「Wii」
ゲーム業界で有名な「任天堂」もブルー・オーシャン戦略を用いて、他社の追随を許さないほどの成功を手に入れています。従来の1人きりで遊ぶゲームではなく、家のリビングなどで複数で遊べて全員が楽しめるという付加価値をつけることで、新しいターゲットの開拓に成功しました。
これまで、SonyやMicrosoftなども家庭用ゲーム機を販売しており、市場はレッドオーシャンの状態でした。そこで、任天堂はこれまでの価値観にとらわれずメジャーな市場から離れた商品開発を行いました。ターゲットを「ゲームファンではない人たち」とし、従来のゲームファンの求めるリアルな映像や複雑な機能にとらわれず、誰でも簡単に操作できる点を重視したスポーツなどのカジュアルなゲーム開発に注力しました。それが2006年に発売された「Wii」です。高機能ゲームの開発には莫大なコストがかかっていましたが、カジュアルさに重きをおき、単純明快に楽しめるゲームにすることでコスト削減につなげました。
ブルー・オーシャン戦略の海外の成功事例
続いては海外の成功事例を紹介します。海外でも多くの成功事例があります。
IKEA
スウェーデン発祥の家具メーカー「IKEA」は、それまで常識だったものを「取り除く」ことで成功した事例です。IKEAでは組み立てる前のパーツごとに分かれた状態で家具を販売しています。それは購入者にとって「持ち運びしやすい」「組み立て作業を楽しめる」というメリットとなり、販売者にとっては在庫用の「スペースを削減できる」というメリットを生みます。
また、非常に早いスピードで家具が届けられることも特徴の一つです。競合他社と比較して納品までのスピードが早いため、引っ越しやオフィス移転などにおいて、IKEAに依頼する消費者が増えています。
今では一般的な販売形式ですが、IKEAはこのシステムの先駆的な存在として知られています。家具業界の常識として存在していた「組み立てられた状態で販売する」という競争要因を取り除き、新たな価値を生み出しました。
サウスウエスト航空
サウスウエスト航空はアメリカの航空会社で、世界で初めてのローコストキャリアの航空会社です。
当時のアメリカでは、中距離の地方への移動は、長距離バスを利用するしか方法がなく、比較的短距離のローカル都市を安く、早く移動する手段がありませんでした。そのような長距離バスの市場に、航空会社であるサウスウエスト航空が目をつけたのです。
しかし、飛行機での移動を長距離バスと同価格帯で行うことは簡単なことではありません。そのため、機内設備やサービスの簡素化、機内食や広い座席の削減を行いました。またパイロットや整備士の教育費をカットするため、いろいろな機種の飛行機を使うのをやめ、搭乗券もなくしました。さらに、客室乗務員が機内清掃を行うことで、着陸から次の離陸までの時間を短縮し機体の回転率アップにつなげました。
このように、コストカットできるものを「減らす」「取り除く」戦略を行ったことで、短時間で地方都市へ移動するという顧客ニーズにこたえるサービスを提供することができるようになったのです。
ブルー・オーシャン戦略の特徴・メリット
ブルー・オーシャン戦略の大きな特徴は、低コストと差別化を同時に実現できることです。いままでは低コストと差別化を同時に実現することは困難でしたが、ブルー・オーシャン戦略は、バリュー・イノベーションという方法を用いて、低コストを実現しながら、顧客に提供する付加価値を高めていきます。
バリュー・イノベーションとは、新しいタイプの価値を創出することによって顧客に高度な価値を提供することです。同時に提供する価値にメリハリをつけることで、無駄なコストを省き、低コストも実現します。
ブルー・オーシャン戦略のデメリット
ブルー・オーシャン戦略のデメリットは「模倣されるリスクがある」という点です。最初は画期的でブルー・オーシャンだった市場も、成功を見た競合他社が参入することで、レッド・オーシャンになってしまう可能性があります。レッド・オーシャンにならないよう「顧客にとって魅力的な価値をもたらすこと」「企業にとって盤石な利益を維持すること」「従業員や事業パートナーを適切に動機付けること」の3つの整合性を保つことが大切です。
また、独自のノウハウや仕組み作りも対策の1つです。1番に市場に参入するからこその苦労も多くありますが、そこで見つけたノウハウや仕組みは大きな武器になります。会社を長期的に安定させるには、一つのブルー・オーシャンを見つけることで満足せず、新たなブルー・オーシャンを探し続けること、成功のために必要なノウハウや仕組みを大切にすることが重要です。
ブルー・オーシャン戦略で使えるフレームワーク・ツール
ここまで、ブルー・オーシャン戦略の概要について説明してきました。ここからは、実際にブルー・オーシャン戦略を成功させるために、役立つ有用なフレームワーク・ツールを2つ紹介します。
1つ目は「戦略キャンバス」です。戦略キャンバスとは、ビジネス戦略を分析し、計画するために用いられるグラフです。新しい市場を見つけるためにも用いられます。
横軸には、戦略の「競争要因」を並べていきます。競争要因とは、例えば飲食店の場合「価格帯」「メニューの種類の豊富さ」「店内のデザイン性」「持ち帰りのしやすさ」などです。
縦軸は、それぞれの競争要因の「価値の高さ」を示します。例えば「価格帯」が高ければ上の方に、「メニューの種類の豊富さ」の点で弱いなら下の方に点を打つということです。
それぞれの点を結ぶことで、自社の戦略が曲線として視覚化されます。競合他社の曲線も並べて書き込めば、自社の取るべき戦略を考えるために役立ちます。競合他社の持っていない「競争要因」を付け加えたり、競合他社が低い価値しか提供できていない部分を補ったりすることで、新しい市場を見つけることができます。
2つ目は「アクション・マトリクス」です。アクション・マトリックスとは「4つのアクション」とも呼ばれる4つの問いを利用して、自社の戦略を練るフレームワークです。競合他社の戦略キャンバスを作成し、
・取り除く
・減らす
・増やす
・付け加える
の4つの問いを投げかけます。「取り除く」とは、競争要因の項目から消してしまうことで、「付け加える」とは、他社にはない競争要因を書き加えることを意味します。また、「減らす」とは、競争要因の価値を低くして、グラフの点を下に移動させることです。例えば、メニュー数を減らす(メインメニューを際立たせる)ことが挙げられます。「増やす」は逆に価値を高め、グラフの点を上に移動させることです。例えば、店内のデザイン性を高めることや、持ち帰りメニューを充実させることなどが考えられます。
この4つの問いを利用して、戦略キャンバスのグラフを競合他社とは違うグラフに変化させます。これを利用して他社にはない価値を生み出し、新しい市場をつくり出すことができるのです。
まとめ
いかがでしたか?
ブルー・オーシャン戦略は、価格競争に巻き込まれることを回避し、競争相手が少ない未開拓の市場で大きな利益を生み出せる有効なマーケティング手法です。
経営で悩んでる方は、まず「戦略キャンバス」や「アクション・マトリックス」などのフレームワークを使うところから始めてみてはいかがでしょうか。
マーケティングの知識を高めながら、経営戦略の方法としてブルー・オーシャン戦略を参考にしてみてください。