「SEOに取り組んでいるが、アクセスが増えても売上や問い合わせが伸びない」「グロースハックの考え方をSEOにどう生かせばよいのか分からない」と悩むWeb担当者は少なくありません。
グロースハックとは、データをもとに仮説を立て、小さな改善を素早く繰り返しながら、サービスや事業の成長を加速させる考え方です。SEOにグロースハックの考え方を取り入れると、検索順位やアクセスの数だけでなく、事業の成長につながる施策に集中しやすくなります。
本記事では、グロースハックの意味、SEOとの関係、AARRRの段階ごとの施策、すぐに試せる施策、進め方、注意点、体制づくりまでを順番に解説します。
| 確認したいポイント | 結論 | 詳細 |
|---|---|---|
| SEOとグロースハックの関係は? | SEOはAARRRの獲得を担う成長の柱 | 検索のデータは顧客の理解にも役立ちます。順位ではなく事業の成長につながる指標で、SEOの施策を評価します。 |
| すぐに試せる施策は? | 11〜20位のページの改善やタイトルの見直し | 内部リンクの見直し、古い記事の書き直しと統合、自社データを使った独自のコンテンツも効果を確かめやすい施策です。 |
| 注意すべきことは? | スパムに関するポリシーを守ること | 価値の低いページの大量作成は違反の恐れがあります。短期間の数値だけで判断せず、外部の要因も考慮します。 |
グロースハックとは?
グロースハックとは、製品やサービスの利用データを分析し、仮説と検証を素早く繰り返すことで、事業の成長を実現する手法や考え方のことです。広告などの費用を大きくかけるのではなく、データにもとづく改善によって、効率よく成長することを目指す点が特徴です。
ここでは、グロースハックの意味と、従来のマーケティングとの違い、代表的なフレームワークを解説します。
グロースハックが生まれた背景
グロースハックという言葉は、米国のスタートアップの成長を支援してきたショーン・エリス氏が、2010年ごろに「グロースハッカー」という役割を提唱したことから広まったとされています。
資金や人員の限られたスタートアップが、大企業のように多くの広告費をかけずに成長するための方法として注目されました。少ない資源で最大の成果を得るために、データを見ながら素早く試し、うまくいった施策に集中するという考え方は、SEOにもそのまま当てはまります。
グロースハックの事例としては、既存の利用者が友人を招待すると特典を得られる仕組みを作り、広告に頼らずに利用者を増やしたサービスなどがよく紹介されます。こうした事例に共通するのは、サービスそのものに成長の仕組みを組み込んでいる点です。
従来のマーケティングとの違い
従来のマーケティングでは、広告や販促の活動によって、新しい顧客を集めることに重点が置かれることが多くありました。一方で、グロースハックでは、顧客の獲得だけでなく、製品やサービスの使いやすさ、継続的な利用、紹介による広がりまで、成長に関わるすべての段階を対象にします。
マーケティング、開発、営業などの部門の垣根を越えて、事業の成長という1つの目標に向かって改善を進めることも、グロースハックの特徴です。
AARRRのフレームワーク
グロースハックでよく使われるフレームワークに「AARRR(アー)」があります。米国の投資家のデイブ・マクルーア氏が提唱したもので、顧客の行動を5つの段階に分けて考えます。
5つの段階は、顧客を獲得する「Acquisition(獲得)」、初めての利用で価値を感じてもらう「Activation(活性化)」、継続して利用してもらう「Retention(継続)」、ほかの人に紹介してもらう「Referral(紹介)」、収益につなげる「Revenue(収益化)」です。
それぞれの段階の数値を確認し、最も改善の効果が大きい段階から手を打つことが、グロースハックの基本の進め方です。
SEOとグロースハックの関係
SEOは、検索エンジンからの流入を増やすための取り組みです。グロースハックの考え方で見ると、SEOは主に「獲得」の段階を担う施策ですが、それだけにとどまらず、事業の成長のさまざまな段階に関わります。
ここでは、SEOとグロースハックの関係を3つの観点から整理します。
SEOは「獲得」の大きな柱
検索エンジンは、悩みや欲しいものを持った人が自ら情報を探しに来る場所です。検索からの流入は、広告のように費用を払い続けなくても獲得できるため、グロースハックが重視する「少ない費用で効率よく成長する」という考え方と相性のよい施策です。
一度上位に表示されたページは、継続して新しいユーザーを集め続けるため、事業の成長の土台になります。SEOと広告の違いと使い分けは「SEOと広告の違い」で解説しています。
順位ではなく事業の成長を指標にする
SEOに取り組んでいると、検索順位やアクセスの数そのものが目標になってしまうことがあります。しかし、順位が上がってアクセスが増えても、問い合わせや売上につながらなければ、事業の成長にはつながりません。
グロースハックの考え方を取り入れると、「どのキーワードからの流入が成果につながっているか」「どのページが成長に貢献しているか」という視点で、SEOの施策を評価できるようになります。
検索のデータは成長のヒントの宝庫
Search Consoleで確認できる検索語句のデータは、ユーザーが何を求めているかを知るための貴重な情報です。想定していなかった語句で多く検索されていることが分かれば、新しいコンテンツや、場合によっては新しいサービスのヒントになります。
SEOのデータを、集客のためだけでなく、顧客の理解や事業の改善に生かすことも、グロースハックの考え方に沿った活用方法です。
AARRRの段階ごとのSEOの施策
AARRRの5つの段階それぞれに、SEOやコンテンツで取り組める施策があります。段階ごとに施策を整理すると、獲得だけに偏らず、成長の全体を見た改善がしやすくなります。
ここでは、AARRRの段階ごとのSEOの施策を解説します。
獲得:検索の目的に合ったコンテンツを増やす
獲得の段階では、自社の顧客になりうる人が検索するキーワードを洗い出し、その目的に合ったコンテンツを作ります。検索ボリュームの大きさだけでなく、自社の商品やサービスとの関係の深さも考えてキーワードを選ぶことが大切です。
キーワードを選ぶときは、Search Consoleで自社のサイトがすでに表示されている語句も確認しましょう。少しの改善で順位が上がりそうな語句が見つかることがあります。
最初は競合の少ない具体的なキーワードから取り組み、成果の出たテーマを広げていくと、少ない資源で効率よく流入を増やせます。検索の目的の読み取り方は「検索意図の分析方法」で解説しています。
活性化:着地したページで次の行動を促す
活性化の段階では、検索から訪れたユーザーに、ページで価値を感じてもらい、次の行動につなげます。検索した目的への答えを早く示すこと、読みやすい構成にすること、関連するページや資料への導線を用意することが大切です。
検索からの流入が多いのに、すぐに離脱されているページは、活性化の段階に課題がある可能性があります。ページの冒頭に要点を整理した表を置いたり、目次を設けたりすると、読者が必要な情報にすぐたどり着けるようになります。GA4のエンゲージメントの指標などで、ページごとの状況を確認しましょう。
継続:再び訪れてもらう仕組みを作る
継続の段階では、一度訪れたユーザーに、繰り返しサイトを訪れてもらうことを目指します。メールマガジンへの登録、SNSのフォロー、会員の登録など、再び接点を持つための仕組みを用意しましょう。
継続的に役立つ情報を発信していると、ユーザーが社名やサイト名で検索して訪れるようになり、指名検索の増加にもつながります。指名検索を増やす方法は「指名検索を増やす方法」で解説しています。
紹介:共有やリンクが生まれるコンテンツを作る
紹介の段階では、ユーザーがほかの人にサイトやコンテンツを紹介したくなる状態を目指します。SEOの観点では、ほかのサイトからリンクされたり、SNSで共有されたりすることが、紹介にあたります。
独自の調査の結果、役に立つテンプレート、分かりやすい図解など、引用や共有がしやすいコンテンツを作ると、自然な被リンクが生まれやすくなります。被リンクの考え方は「被リンクとは?SEOへの効果と獲得方法」で解説しています。
収益化:成果につながるキーワードとページを強化する
収益化の段階では、問い合わせや購入などの成果につなげます。比較や検討の段階で使われるキーワードや、サービスの名前と組み合わせたキーワードなど、成果に近いキーワードのページを優先的に強化しましょう。
記事のページからサービスのページや資料請求へ、自然な流れで移動できる導線を作ることも大切です。記事からの成果を高める方法は「コンバージョン率を改善する方法」で解説しています。
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すぐに試せるSEOのグロースハックの施策
グロースハックでは、大がかりな施策よりも、小さく試して効果を確かめられる施策から始めることが大切です。すでにあるページやデータを活用する施策は、少ない労力で成果につながりやすいのが特徴です。
ここでは、すぐに試せるSEOのグロースハックの施策を6つ紹介します。
11〜20位のページを優先して改善する
Search Consoleで、平均の掲載順位が11位から20位前後のページを探しましょう。検索結果の2ページ目に表示されているページは、少しの改善で1ページ目に入る可能性があり、流入が大きく増えることが期待できます。
検索の目的に対して不足している情報を補ったり、見出しの構成を整理したりするだけで、順位が改善することもあります。新しい記事を作るよりも、少ない労力で成果を得やすい施策です。
タイトルとメタディスクリプションを見直す
検索結果での表示回数は多いのに、クリック率が低いページは、タイトルやメタディスクリプションが検索した人の興味を引けていない可能性があります。検索の目的に合った言葉を入れる、具体的な数字を入れる、読むと何が分かるかを明確にするなどの工夫を試しましょう。
タイトルを変更するときは、一度に多くのページを変えるのではなく、数ページで試して効果を確かめてから広げるのがおすすめです。
変更の前後でクリック率を比べ、効果のあった書き方をほかのページにも広げると、サイト全体の流入を効率よく増やせます。クリック率を改善する方法は「CTRとは?SEOでクリック率を改善する方法」で解説しています。
内部リンクを見直す
成果につながりやすいページや、上位表示を狙いたいページに、関連する記事から内部リンクを集めましょう。アクセスの多い記事から、成果に近いページへのリンクを追加するだけでも、問い合わせが増えることがあります。
内部リンクは、検索エンジンにページの重要度を伝えるとともに、ユーザーを次の段階へ導く役割も持っています。
古い記事を書き直し、似た記事を統合する
公開から時間がたって情報が古くなった記事や、順位が下がってきた記事を書き直しましょう。また、同じテーマを扱った似た記事が複数ある場合は、1つに統合すると、評価が分散するのを防げます。
記事を増やすことだけでなく、すでにある記事の価値を高めることも、効率のよい成長の方法です。記事の書き直しの進め方は「コンテンツのリライトの方法」で解説しています。
自社のデータを使った独自のコンテンツを作る
自社のサービスの利用データ、顧客へのアンケートの結果、現場の担当者の経験など、自社にしかない情報を使ったコンテンツは、ほかのサイトにはない価値を持ちます。
独自の情報は、検索エンジンからの評価だけでなく、ほかのサイトでの引用や生成AIの回答での紹介にもつながりやすく、少ない本数でも大きな効果を生むことがあります。
型を使ったページの大量作成は慎重に
海外のグロースハックの事例では、データベースの情報をもとに、地域名や商品名などを組み合わせたページを大量に作り、検索からの流入を増やす手法が紹介されることがあります。
ただし、ユーザーにとって価値の低いページを大量に作ると、Googleのスパムに関するポリシーに違反する恐れがあります。この手法を使う場合は、それぞれのページにユーザーの役に立つ独自の情報が十分に含まれているかを、必ず確認しましょう。
SEOのグロースハックの進め方
グロースハックの成果は、思いつきの施策を続けることではなく、決まった手順で仮説と検証を繰り返すことで生まれます。手順を決めておくと、チームの誰が取り組んでも、一定の質で改善を続けられます。
ここでは、SEOのグロースハックを進めるための4つの手順を解説します。
最も重要な指標を1つ決める
最初に、事業の成長を最もよく表す指標を1つ決めましょう。グロースハックでは、こうした指標を「ノーススターメトリック(北極星の指標)」と呼ぶことがあります。
SEOであれば、検索からの問い合わせの数、検索から始まった会員の登録の数など、事業の成果に直結する指標を選ぶのがおすすめです。検索順位やアクセスの数は、この指標を伸ばすための途中の指標として位置づけましょう。指標の決め方は「オウンドメディアのKPIの設定方法」で解説しています。
仮説を立てて優先順位をつける
データを見て、「このページの導入文を変えれば、離脱が減るのではないか」「このキーワードの記事を作れば、問い合わせが増えるのではないか」といった仮説を立てます。仮説は1つではなく、できるだけ多く出しましょう。
出した仮説は、効果の大きさ、成功の確信度、実行のしやすさの3つで点数をつけて、優先順位を決める方法がよく使われます。この方法は、それぞれの英語の頭文字をとって「ICE」と呼ばれます。
小さく試して効果を確かめる
優先順位の高い仮説から、小さく試してみましょう。すべてのページを一度に変えるのではなく、一部のページで試して、変更の前後で数値を比べます。
SEOの施策は、効果が表れるまでに数週間から数か月かかることがあるため、確認する時期をあらかじめ決めておくことが大切です。変更した日と内容を記録しておくと、あとから効果を正しく判断しやすくなります。
結果を記録して次に生かす
施策の結果は、うまくいったものも、うまくいかなかったものも、すべて記録しておきましょう。うまくいかなかった施策からも、「この方法はこの種類のページでは効果がない」という学びが得られます。
記録を蓄積していくと、チームの中に成功のパターンがたまり、次の施策の精度が高まっていきます。
記録には、仮説、実施した内容、実施した日、確認した指標、結果、得られた学びの6つの項目を残しておくと、あとから振り返りやすくなります。担当者が変わっても、過去の学びを引き継ぐことができます。
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SEOのグロースハックで注意すべきこと
グロースハックは、素早く成長するための考え方ですが、近道を求めるあまり、検索エンジンのルールに反する手法に手を出してしまう例もあります。「ハック」という言葉に引きずられず、ユーザーにとっての価値を最優先にすることが大切です。
ここでは、SEOのグロースハックで注意すべき4つの点を解説します。
Googleのスパムに関するポリシーを守る
Google検索セントラルのスパムに関するポリシーでは、検索順位の操作を主な目的として、ユーザーにとって価値の低いページを大量に作る「大量生成されたコンテンツの不正使用」や、期限切れのドメインを購入して悪用する行為などが、違反として挙げられています。
生成AIを使ってページを大量に作る場合も、ユーザーにとって価値が低く独自性に欠けるものであれば、違反の対象になる可能性があります。短期間で流入が増えても、違反と判断されれば、順位が大きく下がる恐れがあるため注意しましょう。
短期間の数値だけで判断しない
SEOの施策は、効果が表れるまでに時間がかかることが多く、変更の直後の数値だけで判断すると、効果のある施策を誤って止めてしまうことがあります。
グロースハックの「素早く試す」という考え方は大切ですが、SEOでは「効果を確認する期間」を施策ごとに適切に設定することが欠かせません。
外部の要因による変動を考慮する
検索からの流入は、季節による需要の変化、Googleのアップデート、競合のサイトの動きなど、自社の施策以外の要因でも変動します。施策の効果を正しく判断するためには、こうした要因の影響を考慮する必要があります。
施策を行わなかったページと比べたり、前年の同じ時期と比べたりすると、施策の効果をより正確に把握できます。
ユーザーの体験を損なわない
成果を急ぐあまり、ページを開いた直後に大きなポップアップを表示したり、記事の途中に何度も問い合わせのボタンを入れたりすると、ユーザーの体験を損ないます。一時的に問い合わせが増えても、離脱が増えたり、ブランドの印象が悪くなったりする恐れがあります。
ユーザーにとって役に立ち、心地よい体験を提供することが、長期的な成長の土台になります。
SEOのグロースハックを支える体制
グロースハックを継続して成果につなげるためには、施策の内容だけでなく、それを支える体制も重要です。SEOの担当者だけで完結させず、関係する部門と連携できる体制を整えましょう。
ここでは、SEOのグロースハックを支える体制の3つのポイントを解説します。
部門を横断して連携する
SEOの改善には、記事の制作、Webサイトの開発、デザイン、営業、カスタマーサポートなど、多くの部門が関わります。営業やサポートの担当者が持っている顧客の声は、新しいコンテンツや改善の仮説のヒントになります。
定期的に関係する部門と数値や仮説を共有する場を設けると、部門をまたいだ改善が進みやすくなります。
データを確認できる環境を整える
Search ConsoleやGA4のデータ、問い合わせや売上のデータを、必要な人がすぐに確認できる環境を整えましょう。データの確認に時間がかかると、仮説と検証のサイクルが遅くなります。
主要な指標を一覧で確認できるダッシュボードを作っておくと、チームの全員が同じ数値を見ながら議論できます。
必要に応じて外部の専門家を活用する
社内にSEOやデータの分析の経験を持つ人がいない場合は、外部の専門家の力を借りることも有効です。外部の視点から、社内では気づきにくい課題や、優先して取り組むべき施策を整理してもらえます。
外部に任せきりにするのではなく、社内にも知識と経験が蓄積されるように、一緒に改善を進める形で依頼するのがおすすめです。
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まとめ
グロースハックとは、データをもとに仮説を立て、小さな改善を素早く繰り返しながら、事業の成長を加速させる考え方です。SEOは、AARRRの「獲得」の大きな柱であると同時に、活性化、継続、紹介、収益化のすべての段階に関わる施策です。
SEOにグロースハックの考え方を取り入れると、検索順位やアクセスの数ではなく、事業の成長につながる指標を基準に、施策を選び、改善できるようになります。11〜20位のページの改善、タイトルの見直し、内部リンクの見直し、記事の書き直しなど、すぐに試せる施策から始めましょう。
進めるときは、最も重要な指標を決め、仮説に優先順位をつけ、小さく試して記録を残すサイクルを続けることが大切です。Googleのスパムに関するポリシーを守り、ユーザーにとっての価値を最優先にしながら、部門を横断した体制で、SEOを事業の成長のエンジンに育てていきましょう。